【Python/tkinter】updateメソッドについて解説

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このページでは、Python の tkinter における update メソッドについて解説していきます。

update はメインウィンドウ・ボタン・ラベルなどの全ての種類のウィジェットに用意されたメソッドであり、mainloop に戻らなくてもイベント処理(発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラの実行)を行うことができる非常に便利なメソッドになります。

ただし、便利であるが故に注意点もあります。

そういった点も踏まえて、update メソッドについて解説を行なっていきたいと思います。

また、update メソッドの役割については、前述でも触れた mainloop のことを知っておいた方が理解しやすいと思います。ですので、mainloop のことをまだ理解されていない方は、先に下記ページを読んで mainloop について理解しておくことをオススメします。

tkinterのmainloopの解説ページのアイキャッチ 【Python】tkinterのmainloopについて解説

update メソッドとは

前述の通り、update は全ての種類のウィジェットに用意されたメソッドです。

実行時には引数の指定は不要で、例えば canvas というウィジェットが存在するのであれば、下記のように記述を行うことで update メソッドを実行することができます。

使い方は非常に簡単ですね!

update
canvas.update()

tkinter でのイベント処理

この update は、即座にイベント処理を実行するメソッドになります。

前述でも紹介した mainloop の記事でも解説していますが、tkinter で開発するアプリでは発生したイベント(ボタンのクリックイベント・キャンバスへの描画イベント等)に対し、そのイベントに関連付けられたイベントハンドラを実行することで様々な動作が実現されています。

そして、このイベントハンドラは mainloop の中から実行されます。

mainloopがイベント処理する様子

より具体的には、スクリプトから mainloop メソッドを実行することで上の図のようなループに入り、このループの中ではボタンのマウスクリックや各種ウィジェットの設定変更等のイベントが発生した際に、そのイベントに関連付けられたイベントハンドラが実行されるようになっています。

そして、そのイベントハンドラの処理が終了した際に、再びループに戻り、またイベントが発生した際にはイベントハンドラを実行するという流れでアプリの動作が実現されるようになっています。

イベントハンドラ実行後にイベントハンドラに戻る様子

このループを、本サイトでは mainloop(メインループ)と呼んでいます。

例えば下記のスクリプトについて考えてみましょう!

簡単なアプリ
import tkinter

def button_func():
    label.config(text='Hello World!!!')

app = tkinter.Tk()

label = tkinter.Label(
    app,
    text='',
    font=('', 40),
    width=20
)
label.pack()

button = tkinter.Button(
    app,
    text='ボタン',
    font=('', 20),
    command=button_func
)
button.pack()

app.mainloop()

上記のスクリプトを実行して、ボタンをクリックすれば、label.config の実行によってラベルの表示テキストが Hello World!!! に更新されることになります。

アプリの動作としてはこれだけなのですが、この表示テキスト更新の際の tkinter の詳細な処理の流れは結構複雑で、具体的には次のようになります。

まず、上記のスクリプトを実行すれば mainloop が実行されてイベント発生待ちのループの処理が行われることになります。そして、ボタンがクリックされることで「ボタンクリック」というイベントが発生し、そのイベントに関連づけられたイベントハンドラ(今回の場合は button_func)が mainloop から実行されます。

この時、実行中の処理は mainloop ではなくイベントハンドラ(button_func)に移ります。

ボタンのクリックイベントが発生した際にmainloopからイベントハンドラが実行される様子

さらに、button_func の中で label.config が実行されることで「ラベルの設定変更」というイベントが発生します。そして、このイベントの情報はキューに保存されます。

イベントハンドラの中でラベルの設定変更のイベントが発生する様子

そして、button_func が終了して mainloop に戻った際に、そのキューに保存されたイベントに対するイベントハンドラが実行されます。つまり、先程キューに「ラベルの設定変更」というイベントが保存されましたので、ここで「ラベルの設定変更」に関連付けられたイベントハンドラが実行されることになります(このイベントハンドラは tkinter 本体で定義された関数となります)。

そして、このイベントハンドラの中でラベルの設定変更が実際に行われ、アプリ上のラベルの表示テキストが Hello World!!! に変更されることになります。

イベントハンドラから発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラが次の週のmainloopから実行され、それによってアプリ上のラベルの表示テキストが更新される様子

この辺りの処理の流れについては、前述で紹介した mainloop の記事でも解説していますので、この説明を聞いてイメージが湧かない方は mainloop の記事を読んでみてください。

ここで重要なのは、ラベルの設定変更が実際に行われるのは label.config が実行された時ではなく、「mainloop に処理が戻った時になる」という点になります。

MEMO

前述の通り、tkinter では mainloop を実行すると mainloop でイベントの発生待ちのループを行い、イベントが発生した際には mainloop からイベントハンドラが実行されます

そして、イベントハンドラが終了すれば mainloop に処理が戻ります

すなわち「mainloop に処理が戻る」とは、実行中のイベントハンドラが終了することを意味します

ですので、例えば label.config の後に sleep 等を利用して10秒間待機したりすると、その待機する時間の分 mainloop に戻るのが遅れ、label.config を実行してから約10秒後に表示テキストの変更が行われることになります。

また、例えば、sleep 等の実行によって mainloop に処理が戻るのが遅くなると、その分ボタンクリック時に実行するイベントハンドラの実行タイミングも遅れるので、ユーザーからはボタンの反応が悪いアプリだと感じられてしまいます。

つまり、「例外」を除き、イベントが発生したとしても、mainloop に戻らない限りはイベントハンドラは実行されないのです(この「例外」の1つが、後述で説明するように update メソッドの実行になります)。

こういった理由から、tkinter でアプリ開発を行う際には「mainloop に戻る」ことを意識してプログラミングを行う必要があります。例えば、特定の時間だけ待機したいのであればスリープではなく after メソッドを利用した方が良いです。

この after メソッドに関しては下記ページで解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

Tkinterの使い方:after で処理を「遅らせて」or 処理を「定期的」に実行する

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update メソッドの役割

ここまで解説してきた通り、ボタンクリックやラベルの設定変更等のイベントが発生した際には、mainloop に戻った時に、それらのイベントに関連付けられたイベントハンドラが実行されることになります。

あくまでもイベントハンドラが実行されるのが「mainloop から」となるため、イベント発生時に即座にイベントハンドラが実行されるとは限らないということになります(イベント発生時に mainloop の中にいる場合のみ即座にイベントハンドラは実行される)。

通常は上記のような仕組みでイベントハンドラが実行されるのですが、実は例外があります。

その例外の1つが update の実行になります。

update メソッドが実行された際には、mainloop に戻らなくても、即座に「既に発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラ」の実行が行われます。

つまり、update は即座にイベントハンドラを実行するメソッドとなります。

例えば、前述の例で挙げたように、下記のようにイベントハンドラの中で label.config 実行後に sleep で10秒間待機した場合、ラベルの表示テキストの更新は label.config を実行してから約10秒後に行われることになります。これは、sleep を実行することでイベントハンドラの実行時間が増え、その分 mainloop に戻るのが遅れるためです。

mainloopに戻るのが遅れる例
import time

def button_func():
    label.config(text='Hello World!!!')
    time.sleep(10)

それに対し、下記のように label.configsleep の間で update メソッドを実行するようにすれば、ラベルの表示テキストの更新は label.config 実行直後に行われることになります。

これは、update メソッドを実行することで、今まで発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラが即座に実行されるからです。

updateメソッドで即座にイベントハンドラを実行する例
import time

def button_func():
    label.config(text='Hello World!!!')
    label.update()
    time.sleep(10)

そして、ラベルの表示テキストの更新後に sleep が行われ、10秒間待機した後に mainloop に戻ることになります。ただし、mainloop に戻った際には既に「ラベルの設定変更」のイベントに対するイベントハンドラは実行済みですので、この時点ではそのイベントハンドラは実行されないことになります。

こんな感じで、mainloop に戻る前に即座にイベントハンドラを実行することができるのが update メソッドとなります。

update メソッドの使用例

続いて、簡単な例で update メソッドの使用例を紹介していきたいと思います。

今回は、下のアニメのような「おみくじアプリ」の開発を例に、update メソッドの使用例を紹介していきます。このおみくじアプリでは、ボタンが押された際にランダムに選んだおみくじの結果(大吉・吉・中吉・凶)を表示するアプリとなります。

1秒ごとに表示されるテキストを更新するアプリ

簡単に作れそうなアプリですが、特に mainloop やイベントハンドラの実行タイミングをご存知ない方にとっては実現が困難なアプリなのではないかと思います。

ポイントは、ボタンが押された直後に あなたの運勢は と表示し、1秒ごとにテキストの最後にピリオド(.)を追加する、さらにピリオドを3つ追加した1秒後におみくじの結果を表示するところになります。結果の表示を焦らす際に良く使うテクニックだと思いますが、tkinter の場合は、このような表示の実現が結構難しいです。

sleep を利用した「おみくじアプリ」(NG 例)

この「おみくじアプリ」を実現する手段として最初に思いつくのが「sleep で1秒待機しながらラベルの表示テキスト変更していく」だと思います。

sleep を利用した場合、この「おみくじアプリ」のソースコードは下記のように記述することになると思います。

おみくじアプリ(sleep)
import tkinter
import random
import time

def omikuji():
    
    label.config(text='あなたの運勢は')
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は.')
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は..')
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は...')
    time.sleep(1)
    
    result = random.choice(('大吉', '吉', '中吉', '凶'))
    label.config(text=result + 'です!')

app = tkinter.Tk()
label = tkinter.Label(
    app,
    width=20,
    font=('', 40)
)
label.pack(padx=10, pady=10)

button = tkinter.Button(
    app,
    text='おみくじ',
    command=omikuji
)
button.pack(padx=10, pady=10)

app.mainloop()

これで上手くいきそうな気もするかもしれませんが、このスクリプトを実行して おみくじ ボタンを押した場合の動作は下のアニメのようになります。

単にsleepを利用するだけだと1秒ごとのテキストの更新が実現できない様子

おみくじ ボタンを押しても あなたの運勢は が表示されずにいきなりおみくじの結果が表示されてしまっています。さらに、表示されるのはボタンを押した約4秒後になります。

このような動作になってしまう原因に関しては、おそらくここまでの解説を読んでくださった方であればすぐに思いつくのではないかと思います。

前述の通り、イベントが発生した際、そのイベントに関連づけられたイベントハンドラが実行されるのは mainloop に戻った時になります。

上記のスクリプトでは、おみくじ ボタンがクリックされた際には「おみくじ ボタンのクリック」のイベントに関連付けられたイベントハンドラ omikuji が実行されます(この関連付けは、tkinter.Button での command の指定によって実現しています)。

このイベントハンドラ omikujimainloop から実行されるのですが、この実行を行うことで実行中の処理が mainloop ではなく omikuji となり、次に mainloop に戻るタイミングは omikuji 終了時となります。

また、omikuji の中では label.config の実行が5回行われ、それぞれに対して「ラベルの設定変更」のイベントが発生することになります。そして、これらのイベントに関連付けられたイベントハンドラは、次に mainloop に戻るタイミング(omikuji 終了時)にまとめて実行されることになります。

ですが、この時にラベルの設定変更が5回まとめて実行されることになるため、ラベルの表示テキストとしては最後に実行された label.config(text=result + 'です!') の結果のみが残ることになるため、あなたの運勢は というテキストは表示されず、いきなりおみくじの結果が表示されることになっています。

また、omikuji の中で time.sleep(1) を4回実行しているため、omikuji が終了するのに約4秒の時間がかかることになります。そのため、ラベルの表示テキストが実際に変更されるタイミングが おみくじ ボタンをクリックした約4秒後となってしまっています。

こんな感じで、tkinter でアプリを開発する際に sleep を利用してしまうと、開発者の意図しない動作になることが多いです。

GUI を利用せずに print を利用してコンソール出力のみを場合は sleep を使っても意図した通りに動作してくれるのですが、tkinter の場合は上記のように意図した通りに動作してくれないので、この点が tkinter 利用の難しさの1つになるかと思います。

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after を利用した「おみくじアプリ」

では、1秒ごとにラベルの表示テキストの更新を行うようにするためにはどうすれば良いでしょうか?

その1つの手段が after メソッドの利用になります。

after メソッドについては下記ページで解説をしていますが、after メソッドを実行すれば、指定した時間だけ処理(イベントハンドラ)を遅らせて実行させることができます。

Tkinterの使い方:after で処理を「遅らせて」or 処理を「定期的」に実行する

sleep では実行時に指定した時間だけ待機されるため、その分 mainloop に戻るまでの時間が長くなります。それに対して after メソッドでは実行時には待機が行われずにすぐに処理が完了します。そのため、after メソッドを利用しても mainloop に戻るまでの時間はほとんど長くなりません。

そして、指定した時間が経過した時に、指定した処理が実行されることになります(この処理の実行も mainloop から実行されます)。

after メソッドを利用した場合のおみくじアプリは下記のように記述することができます。

おみくじアプリ(after)
import tkinter
import random

count = 0
def omikuji():
    global count

    if count == 0:
        label.config(text='あなたの運勢は')
        count += 1
        app.after(1000, omikuji)
    elif count == 1:
        label.config(text='あなたの運勢は.')
        count += 1
        app.after(1000, omikuji)
    elif count == 2:
        label.config(text='あなたの運勢は..')
        count += 1
        app.after(1000, omikuji)
    elif count == 3:
        label.config(text='あなたの運勢は...')
        count += 1
        app.after(1000, omikuji)
    elif count == 4:
        result = random.choice(('大吉', '吉', '中吉', '凶'))
        label.config(text=result + 'です!')
        count = 0

app = tkinter.Tk()
label = tkinter.Label(
    app,
    width=20,
    font=('', 40)
)
label.pack(padx=10, pady=10)

button = tkinter.Button(
    app,
    text='おみくじ',
    command=omikuji
)
button.pack(padx=10, pady=10)

app.mainloop()

今回は、最初に紹介したアニメのように、1秒ごとにラベルの表示テキストが更新されていく様子が確認できると思います。

1秒ごとに表示されるテキストを更新するアプリ

上記スクリプトでは、おみくじ ボタンがクリックされた時に omikuji 関数がイベントハンドラとして実行されるようになっています。

omikuji 関数では、まず count == 0 の時の処理が実行され、label.config でラベルの表示テキストが あなたの運勢は に変更され、さらに count+1 した後に after メソッドの実行を行なっています。

この after メソッドの実行により、1000 ミリ秒後に再度 omikuji 関数が実行されるようになります。

そして、前述の通り、after メソッドでは sleep とは違って実行時に待機が行われませんので即座にメソッドが終了し、さらには omikuji 関数も終了することになります。

この omikuji 関数は mainloop から実行されていますので、omikuji 関数が終了すると実行元(関数呼び出し元)の mainloop に処理が戻ることになります。

mainloop に処理が戻るため、先程 label.config 実行時に発生したイベントに対するイベントハンドラが mainloop から実行されてラベルの表示テキストの更新が行われます。なので、この時点でアプリ上のラベルに表示されるテキストが あなたの運勢は に変化することになります。

そして、1000 ミリ秒経過した際には omikuji 関数が再度実行され、次は count == 1 の時の処理が実行されます。この時も先程とほぼ同様の処理が実行されますので、アプリ上のラベルに表示されるテキストが あなたの運勢は. に変化し(ピリオドが1つ増える)、さらに 1000 ミリ秒経過した際には、omikuji 関数が再度実行されることになります。その後もほぼ同様の動作になります。

こんな感じで、after メソッドを利用することで、すぐに mainloop に処理を戻すことができ、それに伴ってすぐにラベル等のウィジェットの更新が行われるようになります。

sleepupdate を利用した「おみくじアプリ」

1秒ごとにラベルの表示テキストの更新を行うための手段の2つ目が、このページで注目している update メソッドの利用になります。

前述の通り、update を実行することで、それまでに発生したイベントに対するイベントハンドラの実行を行うことができます。今回の例であれば、label.config を実行した直後に update メソッドを実行すれば、update メソッド実行時にアプリ上のラベルに表示されているテキストを更新することができます。

つまり、update メソッドを利用すれば mainloop に戻る前にラベルの表示テキストの更新を行うことができるため、わざわざ after メソッドを利用して mainloop にすぐに戻るように処理を記述しなくても、定期的なラベルの表示テキストの更新を実現することが可能になります。

update メソッドを利用した場合のおみくじアプリは下記のように記述することができます。sleep を利用した「おみくじアプリ」(NG 例) で紹介したスクリプトに対し、sleep を実行する前に update メソッドの実行を追加しています。

おみくじアプリ(sleep+update)
import tkinter
import random
import time

def omikuji():
    
    label.config(text='あなたの運勢は')
    app.update()
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は.')
    app.update()
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は..')
    app.update()
    time.sleep(1)
    
    label.config(text='あなたの運勢は...')
    app.update()
    time.sleep(1)
    
    result = random.choice(('大吉', '吉', '中吉', '凶'))
    label.config(text=result + 'です!')

app = tkinter.Tk()
label = tkinter.Label(
    app,
    width=20,
    font=('', 40)
)
label.pack(padx=10, pady=10)

button = tkinter.Button(
    app,
    text='おみくじ',
    command=omikuji
)
button.pack(padx=10, pady=10)

app.mainloop()

上記スクリプトを実行すれば、今回も最初に紹介したアニメのように1秒ごとにラベルの表示テキストが更新されていく様子が確認できると思います。

updateメソッドを利用することでラベルの表示テキストの更新が即座に行われるようになった様子

最後の label.config の実行を除き、label.config 実行直後に update メソッドを実行することで、label.config によるラベルの表示テキストの更新が即座に行われるようにしています。そして、その後に sleep を実行することで、1秒間待機し、sleep が終了したら同様にラベルの表示テキストの更新を行うようにしています。

最後の label.config 実行に関しては、この実行終了直後に omikuji 関数が終了して mainloop に戻るため、わざわざ update メソッドを実行する必要はありません。

sleep を利用した「おみくじアプリ」(NG 例) で紹介したスクリプトとの動作の違いを考えれば、update メソッドの動作の効果は一目瞭然ではないかと思います。

こんな感じで、update メソッドを利用することで mainloop に戻る前にイベントハンドラの実行を行うことができます。

update メソッドのメリット・デメリット

では、最後に update メソッドのメリットとデメリットについて説明しておきたいと思います。

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update メソッドのメリット

update メソッドを利用するメリットは「スクリプトが簡単になる」だと思います。

実際、after を利用した「おみくじアプリ」 で紹介した omikuji 関数と sleep と update を利用した「おみくじアプリ」 で紹介した omikuji 関数とを比較すれば、後者の方が分かりやすいと思う方が大半なのではないかと思います。

update メソッドを利用しない場合、前述の通り、ラベル等の表示を更新やボタンクリック時の処理を実行するためには mainloop に処理を戻す必要があります。ですので、アプリの反応を良くするためには、常に mainloop に戻すことを考えながらプログラミングする必要があり、それによって処理は複雑になることが多いです。

例えば  after を利用した「おみくじアプリ」 で紹介した omikuji 関数では、after メソッドを利用することで mainloop にすぐに戻れるようにしていますが、これを実現するために関数が呼ばれた回数を管理し、その回数に応じて処理を分岐するような記述が必要となってしまっています。

それに対し、update メソッドを利用すれば、言ってしまえば mainloop を意識することなくプログラミングすることが可能です。それまでに発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラを実行させたいタイミングで update メソッドを実行すれば良いだけです。

mainloop を意識することなくプログラミングできるので、tkinter ならではの書き方をする必要はなく、通常のコンソール出力時と同様の感覚でプログラミングすることができます。

そして、その結果、スクリプトが簡単になります。

update メソッドのデメリット

ただ、そういったメリットもあるのですが、個人的には tkinter でアプリを開発するのであれば mainloop を意識し、常に mainloop にすぐに処理が戻るようにプログラミングすることを心がけたほうが良いと思います。

その1つの理由は、update メソッドに頼って mainloop を意識せずにプログラミングした場合、アプリの反応が悪くなる可能性があるからです。

その実例を示すために、sleep と update を利用した「おみくじアプリ」 で紹介した omikuji 関数を下記のように変更したいと思います。sleep の引数を全て 1 から 5 に変更しています。つまり、ラベルの表示テキストの更新が5秒ごとに行われるようになります。

おみくじアプリ(sleepで5秒待機)
import tkinter
import random
import time

def omikuji():
    
    label.config(text='あなたの運勢は')
    app.update()
    time.sleep(5)
    
    label.config(text='あなたの運勢は.')
    app.update()
    time.sleep(5)
    
    label.config(text='あなたの運勢は..')
    app.update()
    time.sleep(5)
    
    label.config(text='あなたの運勢は...')
    app.update()
    time.sleep(5)
    
    result = random.choice(('大吉', '吉', '中吉', '凶'))
    label.config(text=result + 'です!')

app = tkinter.Tk()
label = tkinter.Label(
    app,
    width=20,
    font=('', 40)
)
label.pack(padx=10, pady=10)

button = tkinter.Button(
    app,
    text='おみくじ',
    command=omikuji
)
button.pack(padx=10, pady=10)

app.mainloop()

このスクリプトを実行し、おみくじ ボタンを押した後にマウスでウィンドウのサイズを変更しようとしても、おそらく上手く変更することができないのではないかと思います(タイミングによっては上手く変更できるかも)。

sleep+updateの場合にウィンドウサイズが上手く変更出来ない様子

同様に5秒間隔でラベルの表示テキストの更新が行われるよう、after を利用した「おみくじアプリ」 で紹介したスクリプトを下記のように変更して同様の操作を行なってみましょう(after の第1引数を 1000 から 5000 に変更しています。)

おみくじアプリ(afterで5秒待機)
import tkinter
import random

count = 0
def omikuji():
    global count

    if count == 0:
        label.config(text='あなたの運勢は')
        count += 1
        app.after(5000, omikuji)
    elif count == 1:
        label.config(text='あなたの運勢は.')
        count += 1
        app.after(5000, omikuji)
    elif count == 2:
        label.config(text='あなたの運勢は..')
        count += 1
        app.after(5000, omikuji)
    elif count == 3:
        label.config(text='あなたの運勢は...')
        count += 1
        app.after(5000, omikuji)
    elif count == 4:
        result = random.choice(('大吉', '吉', '中吉', '凶'))
        label.config(text=result + 'です!')
        count = 0

app = tkinter.Tk()
label = tkinter.Label(
    app,
    width=20,
    font=('', 40)
)
label.pack(padx=10, pady=10)

button = tkinter.Button(
    app,
    text='おみくじ',
    command=omikuji
)
button.pack(padx=10, pady=10)

app.mainloop()

この場合は、おみくじ ボタンを押した後にウィンドウのサイズをマウスで変更すれば、上手くウィンドウのサイズが変更可能であることが確認できるはずです。

afterの場合はうまくウィンドウのサイズ設定が行える様子

なぜ、2つのスクリプトで前述のような動作の違いが生じるのでしょうか?

これは、mainloop に処理を戻すかどうかによって生じる動作の違いとなります。

前者のスクリプトの場合、ラベルの表示テキスト自体は update メソッドの実行によって即座に更新されますが、その後の sleep を実行している間、mainloop ではなく omikuji 関数で処理が行われていることになります。

さらに、ウィンドウのサイズ変更もラベルの表示テキストの変更同様にイベントとして扱われるため、次に mainloop に戻るまで、もしくは次に update メソッドが実行されるまでサイズ変更が反映されないことになります。

したがって、おみくじ ボタンをクリックして omikuji 関数が開始されると、sleep で待機している5秒間はウィンドウのサイズ変更が行われないようになってしまいます。

それに対して後者のスクリプトの場合、after メソッドは「遅らせて実行する処理(関数やメソッド)」の設定のみを行なって即座に終了しますので、おみくじ ボタンをクリックしてもすぐに mainloop に処理が戻ることになります。つまり、5秒間の待機は omikuji 関数ではなく mainloop の中で行われます。

mainloop の中で待機が行われるため、5秒間の間にウィンドウのサイズ変更が行われた際にも、そのサイズ変更を即座に反映することができます。

こんな感じで、mainloop に戻る or 戻らないかの違いは、アプリの反応性に大きく影響します。

上記の例に関しては sleepを利用していることが問題であると言えますが、update メソッドに頼りすぎて mainloop に戻ることを怠ると同様の現象が発生しますので、update メソッドに頼るよりも mainloop でイベント処理が実行されることを意識してプログラミングするほうが良いと思います。

とは言え、mainloop に戻すことを意識してプログラミングした場合、スクリプトが複雑になりすぎる可能性もありますので、アプリの反応性に影響が出ない程度に update メソッドを利用するのは良いと思います。

また、アプリの反応性が悪くても問題ない場合に関しては update メソッドを利用しても良いと思います。例えば自分の作業効率を良くするためのツールを tkinter で開発するのであれば、自身が我慢できればアプリの反応性は悪くても問題ないですよね!こういった場合も update メソッドを利用して単純な処理でアプリを開発しても良いと思います。

まとめ

このページでは、Python の tkinter における update メソッドについて解説しました!

update メソッドを利用することで、mainloop に戻ることなく、それまでに発生したイベントに関連付けられたイベントハンドラを実行することができます。

mainloop を意識することなくウィジェット等の設定を即座に反映することができるため非常に使い勝手の良いメソッドです。ですが、update メソッドに頼りすぎるとアプリの反応が悪くなる可能性もあるため、基本的には mainloop に処理を戻すことを意識しながらプログラミングするようにし、要所要所でのみ update メソッドを利用するようにするのが良いと思います。

今回の記事でも度々登場したように、tkinter でのアプリ開発では mainloop が非常に重要になります。mainloop のことを理解しておけば、tkinter のアプリ開発もやりやすくなるので、mainloop については是非理解しておいてください!

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